卵子凍結について
女性の社会進出、晩婚化という社会的背景から、卵子凍結を選択する人が増えています。
今はまだ仕事のキャリアをつみたい、今はパートナーがいないが将来妊娠したいなど、結婚、出産など具体的な予定がなくても将来に備えて卵子を凍結保存するということは、女性にとって新しい選択肢となっています。
女性は年齢とともに卵子の数が減り、また質も低下します。
女性が子どもを持つ能力は35歳から減少し始めて、40歳を超えるとより顕著になります。
若いうちに自身の質の良い卵子を採取し、凍結保存することで若い時の生殖能力が保たれ、年齢を重ねても女性が出産できる可能性が高まります。
詳しくは日本産科婦人科学会の動画をご覧ください。
当院では「株式会社 グレイスグループ」の卵子凍結保管サービス「Grace Bank」と提携し、卵子をお預かりいたします。 Grace Bank では①ステムセル研究所の大型タンク内で、万全の環境の中で長期間保管する体制と②将来全国各地の提携クリニックで不妊治療が受けられる体制を整えています。将来、転居されても不妊治療をスムーズに始めることができます。Grace Bankの詳細はこちらから
「社会的卵子凍結」の違い
がんなどの患者さんが抗がん剤や放射線治療によって、卵巣機能低下が起きるかもしれない場合、妊孕性(妊娠できる能力)温存のために卵子を採取し、凍結保存することを「医学的適応の卵子凍結」といいます。一方、ご案内している卵子凍結は「社会的卵子凍結」といい、現在治療を受けていない方でも将来のために卵子を凍結保存することができます。現在パートナーがいない方や、妊娠の計画がない方も対象になります。
年齢による卵子の数
女性はお母さんのおなかの中にいるときに、卵子のもととなる原子卵胞が約700万個作られ、出生時には約200万個まで減少します。卵子は新たに作られることはなく、閉経まで徐々に減っていき、年齢を重ねると同時に質も低下していきます。「卵子の老化」と言われるものです。AMH検査では卵巣が赤ちゃんになりうる卵子をどれぐらい排卵する能力があるかを知ることができます。
年齢による体外受精の妊娠率
妊娠率/総胚移植
妊娠率/総治療
生産率/総治療
流産率/総妊娠
2021年の日本産科婦人科学会の全国集計によれば、35歳ぐらいから年齢が高くなるほど妊娠率や出生率は低下し、流産率は上昇していくことが分かります。流産の主な原因は胎児の染色体異常であり、加齢とともに多くなります。
これは米国のデータで、平均28歳のドナーによって提供された卵子と自分の卵子による出産率を比較したものです。年齢が20~30代前半で採取された卵子では、40代での体外受精による出産率も20代とほぼ変わりません。
卵子凍結における妊娠率
卵子凍結によって保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、卵子と精子とを身体の外で受精させる体外受精が必要です。まず、卵子を融解する(溶かす)必要があり、融解の過程で5~20%の割合で卵子が変性してしまうこともあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が無事に育つとは限りません。良好な受精卵が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。これらを踏まえ、卵子凍結での妊娠率を見てみましょう。
◆凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率
- 融解後の卵子生存の確率
・・・80〜95% - その後、精子を注入した場合の受精率
・・・60〜80%
◆卵子を融解した後に、卵子が生存、受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合に、卵子10個あたりで妊娠できる確率は、採卵時の年齢があがるほど低くなります。
- 30歳以下・・・80%程度
- 31〜34歳・・・75%程度
- 35〜37歳・・・53%程度
- 38〜40歳・・・30%程度
- 41歳以上・・・20%以下
卵子の生存率とその後の着床率を考えると、なるべく若い年齢で卵子凍結を行い、10個以上~できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいということがわかります。
卵子凍結のメリット・デメリット
メリット
- 将来の妊娠の確率(体外受精の成功率)が上がることが期待できます。
- 若い時の卵子を使うことで、不妊治療にかかる費用を抑えられる可能性があります。年齢が上がるほど良好な受精卵になりにくくなるので、年齢を重ねてからの不妊治療は経済的にも精神的にも負担になります。
- もしもの病気に備えられます。年齢とともに子宮や卵巣の病気に対するリスクも上がります。万が一の際の妊娠の備えになります。
デメリット
- 卵子を複数個採取するために排卵誘発剤を使います。ホルモンの値などをみながら治療を行いますが、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)がおきる可能性もあります。
- 採卵による腹腔内出血の可能性があります。
- 将来の妊娠を保証できるものではありません。
卵子凍結の流れ
- Grace Bankに会員登録
- 初回診察の予約をおとりください
初回診察
- 感染症検査
- AHM検査
- 治療の説明など
月経2~3日目
月経2~3日目に来院ください
- 小卵胞をチェック
- 注射や内服薬で卵胞を育てます
(通院が難しい方やご希望の方には自己注射の指導をします)
採卵まで4〜6回ぐらい通院が必要です
- 血液検査でホルモンの値と
超音波で卵胞の発育をみます - 採卵日を決定
採卵まで4〜6回ぐらい通院が必要です
- 採卵(できれば10個以上卵胞を採ります)
- 卵子凍結
成熟卵を-196℃の液体窒素で凍結 - Grace Bankに移送
凍結を希望される数に足りない場合は
改めて別の周期に卵胞を育てます
保管方法について
当院は卵子凍結保管サービス「Grace Bank」と提携して卵子をお預かりします。
(HP:https://gracebank.jp/about/)
年齢に制限はありませんが、少しでも若い時点の卵子を凍結することで妊娠率が上昇します。また、妊娠・出産に関するリスクは母体年齢とともに上昇するので、凍結卵子を使用する際には担当医と相談しましょう。
Grace Bankの利用は事前に会員登録が必要です。
Grace Bankはさい帯血保管を行うステムセル研究所にあり、ステムセルの保管システムは23年間無事故を誇り、最新のモニタリング機器と厳重なセキュリティ設備で患者様の大切な卵子をお預かりします。
将来、凍結した卵子を使って体外受精をする際は全国にある提携クリニックにて凍結卵子を利用した不妊治療を受けることができます。
- 液体窒素の自動供給システム
- 24時間対応の監視・記録・緊急時体制
- 突然の地震や津波にも強いエリア・建物
- 最も高いレベルの建築物耐震基準クリア
- ALSOK社による24時間警備体制
卵子凍結のリスク・副作用
排卵誘発剤による副作用
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といい、腹痛や腹部の膨満感の症状があげられます。
当院では、過度な誘発は行わないため、卵巣の腫れや出血といった副作用の症状はあまり起こりません。
ですが、排卵誘発剤の効果には個人差があるため、卵巣が腫れてしまう方もまれにいらっしゃいます。
その場合は、数日間の自宅安静が必要となります。
入院を要するような重度の副作用が発生するケースは全体の1%以下です。
採卵による副作用
下腹部の痛みや、出血などの症状が出る場合があります。
採卵は基本的には安全な手技ですが、経腟超音波ガイド下にて卵巣を穿刺するため、極めてまれに腸や膀胱などの臓器損傷を起こす可能性が報告されています。
また、卵巣表面からの出血、卵巣内での感染が起こる可能性がありますが、全体の0.3%程度です。
このような場合には、数日間の安静入院が必要となる場合があります。
卵子凍結にかかる費用
項目 | 治療費(税込) |
---|---|
AMH検査 | 3,300円 |
感染症採血 | 10,740円 |
超音波検査 | 2,890円/回(平均3回) |
排卵誘発 | 約70,000円 ※使用薬剤により大幅に変動するため、あくまでも参考金額です。 |
ホルモン採血 | 1,160円/項目(平均3項目×3回) |
採卵 | 基本料金60,000円 個数加算11,000円×採卵個数 |
凍結 | 基本3.85万円+容器代5.5千円/本 (1本に成熟卵子3個まで凍結できます) |
※全て自費診療となります
※あくまでの目安の金額となります
費用はおよそ下記のようになります。
(Grace Bankでの保存費要は別途かかります。)
例)初回に卵胞が10個とれた場合
- AMH検査
- 3,300円
- 感染症検査
- 10,740円
- 超音波検査
- 2,890円×3回=8,670円
- 排卵誘発
- 約70,000円
- ホルモン採血
- 1,160円×9項目=10,440円
- 採卵基本料
- 60,000円
- 採卵10個
- 110,000円
- 凍結基本料
- 38,500円
- 容器代
- 5,500円×4=22,000円
- 合計
- 333,650円
2回目以降は AMH検査、感染症検査は不要
電話受付時間
月・水・金9:00~20:30
火・木・土9:00~17:00
日・祝9:30~12:30
電話受付時間
平日8:30~17:00
日・祝8:30~16:00
代表番号(571-0226)から培養室・検査室への取次は
原則できなくなりますので必ず上記番号へおかけください。